参入事例 #03

不動産からニセコエリアの農業へ。リストグループの地域に根ざした参入

コロナ禍の中にあっても高級リゾート不動産への需要が底堅かったニセコエリアで開発案件を検討していたところ、地元の高齢農業者から「農地を含めて譲渡したい」との相談が舞い込んだ。地域貢献を経営理念の柱に据え、2023年11月に農業法人「LIST FARM合同会社」を設立。約4.7haの露地野菜畑からスタートし、設立からわずか2年で農地所有適格法人・認定農業者となり、現在は約19haを所有するまでに成長している。

参入の背景と動機 ― ニセコの農地が、新事業の出発点になった

リストデベロップメントがニセコエリアに関心を持ったきっかけは、コロナ禍においても世界有数のスノーリゾートとして高い注目を集めていたこのエリアの不動産開発ポテンシャルだった。インバウンド需要に支えられた高級物件への需要は底堅く、同社は具体的な開発構想を進めていた。

ニセコの農地

そうした中で転機が訪れた。地元の高齢農業者から「自分が長年耕してきた農地も、信頼できる相手に引き継いでもらいたい」という相談が持ち込まれたのだ。この相談を受けた同社は、社内で本格的な検討を開始した。

リストグループの経営理念には地域貢献が深く刻まれており、グループ代表自身も農業に対する強い理解と関心を持っていた。不動産開発と農業参入という異色の組合せも、「地域と長く向き合う」という理念の延長線上にあると捉え、新規事業立ち上げの機運が社内で高まっていった。

参入への決断と準備 ― 社内公募で志を集め、地域と丁寧に対話する

2022年2月から参入候補地の具体化が始まり、同年8月には参入構想が固まった。11月には俱知安町との協議と社内稟議を経て、参入の方向性が正式に定まった。準備期間中に同社が特に力を入れたのは、農業未経験の企業として地域といかに信頼関係を築くかという点だった。

手探りながらも準備を進め、2023年11月にLIST FARM合同会社を設立。親会社から出向1名と現場作業を担う経営兼任スタッフ2名の計3名体制でスタートを切った。社内公募によって農業参入に主体的に関わる意欲ある人材が集まったことも、この小所帯を機能させる原動力となった。

行政・地域から受けた支援

倶知安町による農地調整・制度・補助金の相談支援

農業参入を進める上で、倶知安町は農地調整・制度面・補助金等の相談窓口として機能し、さまざまな情報を提供した。参入構想が固まった2022年11月には倶知安町との協議と社内会議への付議を経て、正式に参入の方向性が定まった。行政が早い段階から協力体制に入ったことで、農業未経験の企業が地域に溶け込む上での手続面・関係者調整面でも大きな力となった。

認定農業者の取得と補助事業の活用

地元農業者から農地を賃借して1シーズンの営農を経た後、農地所有適格法人として農地を購入した同社は、経営安定化に向けて補助事業を活用しやすい認定農業者の認定を取得した。認定農業者となったことで農地集積への各種支援や農業機械・施設の補助事業への応募が可能となり、段階的な耕作条件の改善と耕作面積の拡大を進めている。

農業参入の取組と工夫

地域の信頼を「行動」で獲得する

LIST FARMが最も意識したのは、農業法人として地域に根差す姿勢を言葉でなく行動で示すことだった。その象徴的な取組が農地の「所有」である。当初は地元農業者から農地を賃借して営農をスタートしたが、1シーズンの実績を経て農地所有適格法人の要件を満たし、2025年1月には農地を購入した。賃借から所有への転換は「ここで続ける」という意思表示であり、地元農業者や町との信頼関係を大きく前進させた。

地元農業者の知見を軸にした作目選択と技術習得

栽培品目の選定においても、企業側の都合より地元農業者の知見を優先した。俱知安町周辺の気候・土壌に適し、かつ技術指導を受けやすい馬鈴薯・カボチャ・トウモロコシ・ニンジンといった露地野菜を中心に据えた。技術顧問となった地元農業者からの直接指導は、栽培技術の習得だけでなく、地域内の農業者ネットワークへの接続という効果も生んだ。「企業が農業を教わる」という姿勢が、対等なパートナーシップの基盤をつくった。

段階的な販路の多角化

初年度は農協への出荷を軸とした安定販路の確保を優先した。実績を積んだ2年目からは親会社・リストデベロップメントの取引先への直接販売を展開し、オンライン販売やふるさと納税返礼品への登録も行った。2024年8月から10月の収穫シーズンを経て、販路確保のめどが立った。

トウモロコシの栽培風景
収穫したトウモロコシ
馬鈴薯の栽培風景
カボチャの出荷作業

これからの展望

現在、LIST FARMが所有・管理する農地は約19haに達している。設立時の約4.7haから4倍超へと規模を拡大し、「農地の出口」を探す地域の高齢農業者から選ばれる存在としての地位を築きつつある。世界有数のリゾート地・ニセコエリアは高い知名度を持つ一方、地価・人件費の高騰と農業者の高齢化・離農という構造課題を抱えている。LIST FARMはその課題の受け皿として、地域農業の持続可能性に貢献することを目指している。

LIST FARMが掲げるのは「1次産業からのまちづくり」だ。農業という営みを通じてニセコエリアの美しい風景を守り、地域に根ざして、人と自然と地域をつなぐ架け橋を目指している。先人から受け継いだ農地で着実に実績を積み上げながら、ニセコエリアの未来と共に歩んでいく。

法人プロフィール

会社名(参入検討法人)

リストデベロップメント株式会社

農業法人名
所在地(農場)

北海道 俱知安町

参入業種

不動産・リゾート開発

栽培品目

露地野菜(馬鈴薯・カボチャ・スイートコーン・人参 等)

農地規模

約19 ha

法人形態

農地所有適格法人・認定農業者

本記事は令和8年3月時点の情報を基に作成しています。